無職の場合の交通事故における休業損害について
1 学生・生徒など
学生・生徒などについては、現実収入を得ていたわけではありませんので、原則として、休業損害の発生は認められません。
ただし、アルバイト収入がある場合には、当該アルバイト収入が得られなかった分について、休業損害の発生が認められることがあります。
また、治療が長期化してしまったために、卒業できず就職ができなくなってしまったなどの場合、就労を開始したであろう時期以降の休業損害の発生が認められることがあります。
実際、大学生(男性・21歳)につき、事故により留年し1年半就職遅れが生じた場合に、賃金センサスを参考に就職遅れの期間分の休業損害を認めた事例(東京地判平成12年12月12日)があります。
2 失業者
⑴ 原則
休業損害は、現実収入の減少を填補するものですので、失業者については、原則として、休業損害の発生は認められません。
⑵ 例外
ただし、就職が内定していた場合や、労働能力及び労働意欲、就労の見込みの蓋然性があるなど治療期間中に職を得られた可能性が認められる場合には、休業損害が認められることがあります。
この場合、失業前の収入や、賃金センサスなどを参考にして基礎収入の金額を算定していく方法を取ります。ただ、再就職先でいきなり高額の給与が得られない可能性も高いことなどに鑑み、賃金センサスを用いるとしても、賃金センサスの〇%というような減額された金額での認定となるケースが多いように思います。
⑶ 裁判例
- ・アルバイトを退職して休職中の被害者(女性)につき、退職した翌日に事故に遭ったことなどの事情から、退職前のアルバイト収入を基礎として算定した事例(大阪地判平成10年1月23日)
- ・離職して積極的に就職先を探していたアルバイト中の被害者(男性)につき、事故前年の収入を基礎に、症状固定までの232日から職を得られるまでの相当期間90日を控除した142日分の休業損害を認めた事例(大阪地判平成17年9月8日 )
- ・定年退職し無職であったが、事故前に雇用契約を締結していた被害者(男性)につき、雇用契約の就労開始予定時から事故後に別の会社に再就職した日の前日までを休業期間とし、雇用契約の月給額を基礎として認めた事例(名古屋地判平成23年5月20日)