交通事故の慰謝料と通院日数
1 交通事故と慰謝料
交通事故により負傷された方は、加害者に対して慰謝料を請求することができます。
慰謝料は、精神的苦痛を金銭で補償するものですが、具体的にどの程度の金額を請求できるのか、分からない方も多いでしょう。
交通事故実務では、一般的に、自賠責基準と裁判基準と呼ばれている慰謝料の基準が存在しています。
2 自賠責保険の慰謝料と通院日数
交通事故の被害者は、加害者側の自賠責保険に対して慰謝料を請求することができます。
自賠責保険の慰謝料は、実際に通院した日数(通院実日数)を2倍にした日数と、事故から症状固定までの通院期間とを比較して、どちらか少ない方の日数に4300円(令和2年3月31日までに発生した事故であれば4200円)を乗じて算定します。
例えば、通院実日数が30日(2倍では60日)、通院期間が90日の場合には、60日<90日であるため、60日に4300円を乗じた25万8000円が自賠責保険の慰謝料となります。
このように自賠責保険の慰謝料と通院日数には密接な関係があります。
3 裁判基準の慰謝料と通院日数
裁判基準の慰謝料とは、交通事故の被害者が裁判により慰謝料を請求した場合に、裁判官が認定する可能性がある目安の慰謝料額のことです。
⑴ 一般的な算定方法
一般には、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準編)」という表紙が赤い本(交通事故の「赤い本」と呼ばれています)に掲載された、入通院慰謝料算定表別表Ⅰ及び別表Ⅱを元に算定します。
むち打ち症で他覚所見がない場合等(「等」は軽い打撲・軽い挫創(傷)の場合を意味します)は別表Ⅱを使用し、それ以外の負傷の場合には別表Ⅰを使用します。
この算定表は、原則として、事故から症状固定までの入通院期間に応じて慰謝料額を算定する、という形式をとっています。
⑵ 通院実日数との関係
ただし、通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3.5倍程度(別表Ⅱの場合は3倍程度)を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることがあるとされており、この点で、通院実日数が関わってきます。
実日数を基準にした算定には注意が必要です。
かつて、別表Ⅱの慰謝料は、「慰謝料算定の期間は、その期間を限度として、実治療日数の3倍程度を目安とする。」との説明がされていました。
すなわち、通院実日数を3倍した日数が通院期間よりも短い場合には、そちらを元に慰謝料を算定することを原則としていたのです。
しかしながら、裁判実務では、通院実日数を元に算定した金額よりも高額な慰謝料が認定されることが多かったことから、現在の基準に改定された経緯があります。
それにも関わらず、保険会社の担当者の中には、通院実日数が少なければ、通院期間の長短に関わらず、通院実日数を3倍した期間を通院期間として慰謝料を算定してくることがあるため、注意が必要です。
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